エージェント・レイ‐狂人の島‐
襲い掛かってくる人々から逃れ、時には突き飛ばし、乱暴に平手で殴ったりしながら。

私は彷徨うように市街地を逃亡する。

…袋小路にはまりつつあった。

唯一の島の外への交通手段だった定期船は暴徒達によって燃やされてしまっていた。

こんな孤島では、車での脱出経路は存在しない。

時折公衆電話を見かけるものの。

「何で!?」

コインを入れても繋がらない。

まるで電話線そのものが断線しているようだった。

そういえば街のそこかしこに火の手が上がっている。

火事の影響で電話線もストップしたのだろうか。

ライフラインにまで支障が出ているのかもしれない。

…孤立無援。

そんな絶望的な言葉が、頭の中に浮かんでは消えた。


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