Bitter&Sweet




 怖いのと哀しいので


涙が 溢れると



パッと手を放して



「泣かないでよ、これくらいで」



……………これくらい?



「……ふざけないでよっ!」



怒りに任せて
振り上げた 腕は
本郷先生に掴まれる



「………忘れた南が
いけないんでしょう?」



本郷先生は掴んだ私の手首を
ギリッ…と強く締めた



「………いっ」

思わず顔をしかめ声を上げると


鼻の頭がぶつかりそうなくらい
近く私の顔をのぞき込み




「何よりも大切な人を
忘れるから
ヒドイ目に合うんだよ」




悔しい、言い返せない……




顔を歪ませ
本郷先生をにらむと



「…………ああ、いいね。
その目だよ…………
ぼくの大好きな目だ。」



満足そうな表情を浮かべ


手首を掴む力が緩んだから



バッと振りほどき
走って その場を逃げ出した






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