Bitter&Sweet




仲直りすることなく
私は引っ越した。



お互いに何も言えずに
立ち尽くす



「何があったか
教えてくれないの?姫」



「お兄ちゃんに関係ない」



言えない。
本郷先生に
言われたこと
されたこと



何一つ知られたくない



お兄ちゃんにだけは
知られたくない…………



スッ………と
お兄ちゃんが動いた気配を
背中で感じた時



フワッと
私の身体は白衣の腕に包まれた




 ドキンッ………



ギュウ………って
お兄ちゃんは後ろから
私を抱きしめた。



「…………」


口を開いても言葉が出ない


鼓動が早まり


身体中が甘くしびれて


頭がクラクラした―――――




つい さっき
本郷先生に同じことをされた


その時は恐怖しか感じなかった



なのに、相手が
お兄ちゃんってだけで


こんなにも違う



ダメだって わかってる


だけど心も身体も
言うことを聞かない


胸は切なく震えて
身体中を甘く満たしていく



お兄ちゃんは私の肩に
顔を埋めて



「………どうしたの?
泣かないでよ、姫
姫が泣くと……
オレもダメになるから」


囁くような甘い声


服を通して肩に伝わる吐息


残酷だよ、お兄ちゃん



バカになる


ずっと このまま
抱きしめてて欲しいなんて
思わせないで……苦しいの



お兄ちゃんが好きだから





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