Bitter&Sweet



私を抱く腕にそっと手をかける



ほどかなきゃ



このままなら 私 おかしくなる



もっと ずっと きつく



そんなこと願ってはいけない



「………離して………」


自分の出した声に
恥ずかしくなった。


隠しきれない
甘さを含んだ
私の声


離してなんて思ってないこと


丸わかりじゃない





ゆっくり
お兄ちゃんの腕がほどけて



身体を少しななめに振り返り
お兄ちゃんと目が合う



    ドキンッ………



悔しそうに唇を噛んで
少し頬が赤い




ドキドキドキドキ



鼓動だけが耳の奥に響く



 好きだ、どうしても



「姫。…………オレ」


お兄ちゃんが口を開き
だけど言いかけてやめる



「…………姫」


ドキドキドキドキ


「姫、オレは――――――」



ヴー、ヴー


お兄ちゃんの白衣の胸ポケット
PHSが震えて



「………ごめん。行かないと」



PHSを握りしめ



「何か困ってるなら言って
………………オレは姫の……
兄なんだから、さ……」



 兄



その言葉が私の胸を貫いて



うなずいて
カンファレンスルームを出た



間違ってる、何もかも。
許されない、何もかも。




さっきとは違う涙を
ゴシゴシ拭った



< 214 / 261 >

この作品をシェア

pagetop