Bitter&Sweet



夕方、急患でそのまま入院になった男の子


久しぶりに会う
楽くんと雅哉さん



病室のベッドの上


苦しそうな楽くんの呼吸
ヒュー、ヒュー
狭窄音が聞こえる



モニターをつないで
酸素マスクをつける


不安げにこちらを
見ていた雅哉さんが


「雨が降るとどうしても
発作が出やすいですね」


私もうなずいて


「そうですね」


低気圧はどうしても
発作を誘発するんだよなぁ…



「……ひ…めこちゃ……」


ベッドにぐったりしてた
楽くんが酸素マスクを外して


「…姫…子ちゃん…」


「ああ、楽くんダメだよ。
治るまでマスクは外さないで」


「……やぁだ…」


付けようとすると
楽くんはいやいやする


「楽っ!我慢しなさい」


雅哉さんが
少し強めの口調で言うと


楽くんは目に
たくさん涙を溜めて


「……めこちゃ…」


ヒュー、ヒュー
楽くんからは相変わらず
苦しそうな狭窄音が聞こえる



「なぁに?」


「姫…子ちゃ…はパパ嫌い…?」


  ドクンッ……


慌てたように雅哉さんが


「なに言ってんだ、楽…
すみません、松雪さん」



楽くんは すがるような目で
じっと私を見ていた



< 215 / 261 >

この作品をシェア

pagetop