吸血鬼と紅き石
しかも額には口付けられた感触さえ残っている気がするから頂けない。

ブンブンとその感触を振り払おうと首を左右に振った所で、ツンツンと己の服が引っ張られる感触に下へと目を向ければ。

そこに、自分の様子を窺う幼い瞳とかち合う。

「…タ、ターニャ」

周りが見えずにすっかり自分の世界へと浸っていたリイエンは、そこでようやく恥ずかしさと共に我に返る。

「どうしたの?」

問い掛け向けて低い目線に合わせてかがみ込めば、そのまま首根にぎゅうと抱き付かれる。

< 86 / 263 >

この作品をシェア

pagetop