風とウルフと忘れた過去
ガシャン!

カラカラカラ…


静寂を保っていた道場に竹刀が落ち転がっていく音が響き渡った。

手から滑り落ちた竹刀。

あぁ、俺としたことが…取りに行かなきゃ


だが竹刀を取りに行くことも、体を動かすことも俺にはできなかった。

「藤原!!貴様、武士の命である刀を手放すとはどういうつもりだ!!早く拾え!!」

怒鳴る顧問の声は聞こえているが心まで響かずにいる。


不意に足がガクガクと震えだし、立っていることを許さないように膝が崩れ床に着いた。

試合場の外にいた皆がギョッとしている。

ザワ…

あいつどおしたんだ?

キモくねぇ?

てか誰か聞いてこいよ

ハハッ、カッコ悪

どうせ顧問に怒られたのがショックだったんだろ




誰も近寄らない…
助けにはこない…
俺って何?


呼吸が速くなり、目の前が暗くなる…

ヤバい…意識と…ぶ…

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