どくんどくん2 ~あの空の向こう~
こんな非常事態に水野さんの助けがないと・・僕どうしていいかわからない。
助けて・・
水野さん・・・。
「なぁ、君何歳?」
今日から、同じ部屋になった茶髪の少年が話しかける。
どう見ても僕より年下の少年は、生意気にもタバコを吸っている。
折り返し地点を通過したこの合宿。
初日から昨日まで同部屋だった人達とは、結構親しくなれた。
一人で参加してる人は、ほとんど大人の人。
どういう事情でか、免許取り消しになった弁護士さんと、忙しくてなかなか免許が取れなかった精神科医。
僕が仲良くなった2人の男性は、今日からは別の部屋。
「聞いてる?何歳なの?」
もう一度僕に話しかけるその少年は、茶目っ気のある笑顔で話しかける。
「俺、18歳。小さな工場で親父の仕事手伝ってるんだ。寛太って言うんだ。」
「・・あ、僕19歳。専門学校行ってる。神宮司ハルって名前。」
精一杯大人の顔してそう言った僕に、一枚うわての寛太が言う。
「え~~?年下だと思った。ハルって呼ぶことにしよっと。俺、寛太でいいから。」
人見知りをするタイプではないんだけど、会ったその日から下の名前で呼び合うことに少し抵抗がある。
「聞いてくれる?俺、もうすぐ父親になるんだ。」
まだ子供のようなあどけない顔の寛太の言葉に僕は目を白黒させた。
「そんなにびっくりしなくてもいいじゃん。彼女は生まないって言ったんだ。でも、それは、俺には本心とは思えなかった。きっと俺を試してるんだって。」
「彼女何歳?」
「17歳。まだ自信がないとか理由は言ってたけど、俺の気持ち確かめる為の嘘だと思った。俺は、いつか結婚するならちょっと早いけど、結婚して子供育てたいって言った。生まないって言った彼女に本気で怒ったんだ。」
寛太は自分の拳を見つめながら、話す。
「君は・・寛太・・は不安じゃないの?」
「そりゃ、不安だらけ。でも、子供の親になれるってことのほうがうれしくて仕方ない。今は、彼女も母親になる準備ができてる。」
さっきまで子供だと思ってた寛太の顔が大人びて見えた。