旦那様は社長 *②巻*
会長が会社に乗り込んできた2日後。
あたしと悠河は、悠河が運転する車で有栖川本家へ向かった。
しっかりと絡められた2人の指。
きっと悠河も不安なんだ……。
会長はいつだって、予期せぬことを引き起こすから。
会長秘書から昨日の夜、電話で『明日10時に本家へ』という連絡を受けた時は、受話器を持つ手だけじゃなくあたしの全身に悪寒が走った。
悠河に伝言を伝えると、「そうか」という力ない答え。
そしてすぐにベランダに出て、タバコを吸いながらどこか遠くを見ていた。
きっと美姫のことを思っていたんだと思う。
ベッドに入った午前1時。
悠河の胸へ飛び込むと、力強く抱きしめ返してくれた。
午前2時。
悠河の手は、あたしの髪を撫で続けていた。
午前3時。
眠ったフリをして閉じていた片目を開くと、やっぱり悠河は目を開けたまま瞬きもすることなく、意識を手離していた。
午前4時。
『悠河』と名前を呼ぶと、優しいキスが全身に降ってきた。
午前5時。
息の上がった悠河があたしを見下ろしながら言った。
クラクラしてしまうような、とても力強い眼差しで。
『新しい有栖川を……作るぞ』
悠河の中で、何かが吹っ切れたようだった。