旦那様は社長 *②巻*
あたしは重い巻物の紐をゆっくり解いて会長に言われるがまま、サラサラと巻物を開いた。
「第523条……」
長い巻物を手の上で滑らせて“523”の文字を探す。
「あっ、あった」
「それを読み上げてもらえるかの?」
「あ、はい。えっと…第523条…有栖川家に嫁ぎし者、1年以内に嫡子を身ごもるべし…」
ーーーはい?
「嫡子…ですか?」
「ああ。でも時代は変わったから、男でも女でも構わないんだ」
「え…社長はご存知だったんですか?」
隣で平然と口を開いた
社長。
「ああ。オレは有栖川の人間だからな…」
「…そう…ですよね…」
確かに社長の言う通りだ。
でも…このしきたり…どうして今も守らなきゃいけないの?
さっき会長は言ってた。
“今守られてるのは、ほんの一部”だって……。
「光姫さん…そういうことじゃ。有栖川家に嫁いだからには、このしきたりには従ってもらわねばの~」
そう言いながら、会長は「後何ヶ月かの~」なんて呟いていた。