鬼の花嫁
その日の夜
何人かの村人たちは村長の家に集まった。
「今年はこのまま雨が降らなければ
飢饉になるだろうな。」
重い雰囲気の中、
佐久助の祖父が
先に口を開いた。
「うむ。」
長老があいづちをうつ。
「伸介、村の食糧庫は?」
「はい、大丈夫です。去年からの貯蓄が
まだ十分あります。今年の飢饉は
なんとか乗りきれるでしょう。」
伸介と呼ばれた男は
村の食料庫の管理を
任されている男だ。
真面目な性格で
みんなから信頼されている。
「そうか。」
「もし…来年も飢饉だったら?」
「…厳しいですね……今年乗り切るので
ぎりぎりですから…」
「来年も飢饉だったらおれたち
どーなっちまうんだよ?」
「吉次郎!
皆を不安にさせるような発言は慎め!」
村長に叱られ小声で
ぶつぶつ文句を言う
吉次郎を横目でみながら
長老の息子が言った。
「なんとか策を練らないと・・・」
「長老!何かいい案はないものか?」
そうだそうだとみんな
長老の意見を求めた。
「うむ・・・本当に危険な場合は他の村に 助けを求めるしかないだろうな。」
「まぁ、なんとかなりますよね!」
明るく伸介が言う。
「・・・・そうじゃな。
・・・・そうだといいが。
まぁ、今日の所は解散じゃ。」
「長老、話がある。」
村人が帰り始めた時を
見計らって佐久助の
祖父が長老に声をかけた。
「で、話とは何だ。三武郎。」