俺様執事に全てを奪われて
「こういうの苦手なんだ
面と向かうと、言えないんだ
元のことは好きだ
すごく好きだ
好きだけど…どうしていいかわからない」

布団の中で、わたしが叫ぶように言う

元の手が布団から離れた

もう無理やり、布団を取る気はないようだ

「何を、どうしたんだ」

元の低い声が、布団の中にまで聞こえてきた

「わからない」

「今の俺は…どうして嫌いなんだ?」

「わたしの気持ちを理解してくれない」

「乙葉が何も言わないからだろ」

「なんて言っていいか、わからない」

「正直に言え」

「何を?」

元の言葉が止まった

10秒くらい間があいた

「俺を好きだと、乙葉は言ったな?
じゃあ、なんで見合いを断らなかった?
いくら聖子様に押し切られたとしても、家に帰ってきてからでも
充分に断ることはできたはずだ」

「悔しかった
『あなたくらいしかいなかったよね
引き受けてくれそうな女は』って言ったんだ
もっと上流階級の女が良かったと…
馬鹿にされてると思った
だから、見返してやるって思った
思い通りに動いているふりして、最後の最後で
『ざまあみろ』って言いたいんだ」

元の返事がなかった

元の次の言葉が来ない

わたしはそっと布団から頭を出した

元はわたしに背を向けて、ベッドに座っている
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