俺様執事に全てを奪われて
布団の向こう側で、愛子が元と話をしているのが聞こえた

愛子の声しか聞こえないし、何を話しているのかわからない

電話を切る電子音が聞こえると、わたしは布団の中から顔を出した

「元は何だって?」

「むかつく」

「は?」

愛子が、目を吊り上げて怒っている

ど、どうした?

「ちょっと、何なのよ!
何、あのクールな態度はっ、え? ちょっと女を何だと思ってるのよ
執事の仕事なんてどうでもいいじゃないのよ」

愛子が携帯をベッドに投げた

ちょいちょい、わたしの携帯を投げるなよっ

「乙葉さん、新しい男を探すべきだわっ
もっと優しくて、情熱的な男がいいわね
ふん、私も協力するから」

「…はあ
なんかわたしが怒る隙を奪われた気がするんだけど」

そんなに怒らなくても…

元がクールなのはいつものことだし

あいつにとって執事の仕事が一番優先されるからな

「だってさ
執事の仕事があるから、迎えに行けないって言うんだよ
むかつくでしょ
頭に来るでしょ
せっかく乙葉さんが、好きだって言ったのに」

いや…好きとは言ったが・・・嫌いとも言ったしな

まあ、もう2度も振られてるし

新しい男は見つけないとだな

たぶん

いつかは結婚したいしな

誰かの嫁になってみたいもんだ

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