クール王子
セシルはレジスと初めて会った日の事を思い出した。
――あれは…
まだセシルが母国の国で立派な姫として成長していた頃の話だ。
雨が激しく降る夕刻、セシルは身を隠して久しぶりに城の外へ出ていた。
こんなにも激しい雨だというのに
凛と道の小脇に綺麗に咲いたバラたちに目を奪われて
ただただ雨をも忘れて突っ立っていた。
「なにをしている?」
…そこに無愛想に現れたのがレジスだった。
それから度々その場で会うようになっていった。
だけどレジスが何者なのか聞いても教えてくれなくて。
セシルも一国の姫。
素性のわからない用な者に身分を明かす訳にもいかず
お互い町人なのか、貴族なのか分からず
ただただ話をするだけのためにバラの咲いたこの道で待ち合わせをしていた。