モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇

直哉の人格に偏りがあるのは裕子が1番よくわかっていた。


会社、世間に対しては強く完璧な鎧を纏った彼の心の中は

誰よりも弱く、孤独なのだ。



質屋で現金を手にし、病院へ向かう電車に乗った時、ふと、中吊り広告に視線をやった。

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違う、違う。

直哉は病気だ・・・とても悲しく重い病なのだ・・

治るの?

何が?

悪い所はどこなのだ?

精神?人格?思考・・・?

価値観、経験・・・・ 家庭環境・・・



気がつくと裕子は、自分の爪を血が滲むほど深く、噛みちぎっていた。




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