獣闘記
間合いが戻って30秒が経った。


二人は動かない。



1分が経った。


二人は動かない。



2分…まだ動かない。


龍太は、自分の心臓の音を数えていた。

風の温度、石の匂い、地面の感触を感じていた。



3分になっただろうか。


泰山が突然動いた。
今までの沈黙が嘘のように、ただ、前に歩き始めた。



何も構えず、普通に歩いているだけなのだが、疾い。


十歩はあった距離が、動いた瞬間もう五歩程になっていた。



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