硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
エレベーターは、速やかに下り、B1へ着いた。
静かに、扉が開く。

彼は、エレベーターを降りて、停めた車へと、地下の駐車場を歩く。

私は、彼の後について、歩くのだった。

この時に、私は、
この男性(ひと)についていこうと、決めたのかもしれない。


車の傍にくると、彼は、速やかに鍵を開けて、後部座席のドアを開けた。
彼が、優しい目をして私の方を見る。

私は歩み寄り、速やかに車に乗った。

彼は、後部のドアを閉め、運転席に乗り込む。

まだエンジンのかかっていない静かな車内で、彼は、私に尋ねた。

「どうして、脱ごうとした?」

私は、頭を整理して、口を開いた。

「お仕事だから」

「お仕事、だから?」

「はい。お仕事だから。自分の仕事のための、始まりの面接だったから」

少し、沈黙が流れて、彼は、言った。

「仕事なら、脱ぐのか?どんな相手でも。どんな状況でも。どんな場所でも」

私は、彼の質問を聞いて、考えた。

そして、口を開いた。

「どんなでも、脱ぐわけじゃない。普通ならしない。必要でないことはしない」

「じゃあ。何で、今日は?」

「今日は、きっかけはどうであれ、貴方の命令で、あの人は私の面接をした。もしかしたら、あの男のこれまでのふぬけや悪態に、男同士、約束を破るとどうなるか、男として恥じを知れと、あの男を戒めるために、したことだったかもしれない。でも、私は、面接をされた。貴方が命令した元で。貴方が私を面接したのと同じこと」

彼は、黙って聞いている。

「私には、貴方の仕事を受ける意思があった。そのための面接の中で、やれというなら、私は、やります」

私は、自分の意思を言い尽して、黙った。

彼の質問に対する私の答えは、以上であった。

沈黙が流れ、私が言い終えたと悟ったのか、彼は、静かに言う。

「わかった」

納得した、声だった。


彼は、エンジンをかけた。
凄い音で、エンジンを蒸かす。

軽快な音楽とともに、車は、発進した。

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