硝子の靴 ~夜帝の紅い薔薇~少女A~
男の人と初めて行った、ハンバーガーショップ。

家族とはあるので、生まれて初めてではなかったが、この店は初めてで、男性と初めて行った、初めて入った店だった。

彼は、もう、質問をせず、あれから、同じ話はしなかった。

会社にいる時とは違って、二十歳の青年の顔だった。

ハンバーガーを美味しそうに食べて、無邪気に笑う。

私は、ホッとした。

素直に言えば、今日の中で、初めてホッとなれた。


時刻は、四時半になり、彼は、私を送ると言った。
そして、家を教えたくなければ、どこでもいいから、近くを教えてくれ、とも言った。


私は、家の前まで送ってもらうことにした。

家を教えた後の、彼の行動の心配は、しなかった。

もし、彼が…、二十歳の若さで会社を経営する彼が、私の家を知って、何か変な事をする様な変な人間だったとすれば、私の識見の無さの、自業自得。

これから、もし、私の身に何か起きたら、私ができない場合は、他の人に、私の両親に知らせてもらわなければならない。

私は、家を教えるのを躊躇することも、親に見られたらと思うこともしなかった。

敢えて、しなかった。

理由は、自分でもわからない。

私は、深く自問するのは、やめた。


帰りに、彼は、車の中で、私に、携帯電話を渡した。

私が、持っているよと不思議そうに言うと、彼は、自分の携帯電話を二つ見せて、こっちはずっと使っている仕事用、こっちは新しく買った携帯で、二人だけで使うための、お揃いだから持ってて、と言った。

彼は、私を家の前まで送ると、速やかに、車を走らせて去って行った。

去り行く車を見ながら、私は思う。

彼は、何の仕事を私にさせたくて、私に声をかけたのだろう。

結局、彼の口からは、私の仕事は何か、出ないままだった。

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