カップラーメンと君と俺
ここで避けるように出て行くのも変だし、向こうも気にしてないみたいなので、とりあえず大急ぎで弁当を食べることにした。


…が、食べることに集中しすぎていた俺は、すぐ横に醤油女が立つまで、近づいてきたことに気づかなかった。

はっと顔を上げると、醤油女はまじめな顔で俺と弁当を見て、

「おいしい?」

と尋ねてきた。俺は、口の中の食べ物をかむべきか、その前に返事をするべきか、頑張って飲み込むべきか、グルグルと考えたまま金縛りにあったように動けなかった。

醤油女はそんな俺に気づいたのか、

「ごめんね、食べてるのに。」

と言って、屋上から出て行った。



重い金属製の扉が閉まる音で、俺の金縛りが解けた。

口の中の玉子焼きは甘くて、懐かしい感じ。

ばあちゃんの玉子焼き…卵を3つ使って作る玉子焼きは、フライパンの形そのままの、真ん丸い玉子焼きだった。

「うまいよ…ホント。」

誰に言うでもなく、俺はつぶやいた。
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