愛ノアイサツ
「あれ・・・。」
目が覚めたときにはすでに夕日が半分も隠れていた。天気が好かったから外の空気に触れていたくて、お気に入りのCDを聞きながらぼんやりといつもの風景を眺めていたら眠ってしまったらしい。妙な感触に手で触れてみると、柔らかな灰色のパーカーが肩からかけられていた。大きめのサイズで明らかに自分の物ではない。多分男物だ。

「誰のだろう・・・。わざわざかけてくれたのかな・・・。」

ヒラリと表と裏を見てみるが普通のパーカーだ。サイズはL。ロゴはどこかで見たことがあるが、俗世から離れて生活しているせいでよくわからない。失礼だとは思いながらもポケットに手を入れてみる。・・・左ポケットは何もない。右ポケットにも同様に手を入れてみる。

「あれ・・・なんかある。」

取り出したのは薄い紙だった。シンプルだがシックな感じのデザインにヴァイオリンが印刷されている。

「城田稜、ソロコンサート、S席A14 特別優待券。」

これってコンサートのチケットだよね、どうしよう・・・。S席ってすごく高いんだよね・・・。

どうしようかと迷っていたが結局良い案も浮かばず、そのままパーカーとチケットを持ち自分の病室へと戻った。
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