愛ノアイサツ
「城田さ~ん。」

オケとの合わせも終わりさっさと楽器をしまいに行こうとしたら明るい声に呼び止められた。

「野木くんか。何?」

「練習お疲れさまっす。やっぱ城田さんすごいっすね!俺一緒に弾いてて感動しちゃいましたよ。」

「あ、うん。ありがとう。」

野木くんは日フィルのチェロの演奏者だ。昨年大学を出て、僕がでてからオケに入ったから実際に一緒に弾いてたわけではないけれど、一応先輩と後輩の間柄だ。

「これからみんなで飲み会なんっすけど、女子メンバーが城田さん連れてこいってうるさくて…」

「悪いけど今日は…」

いつもならそのへんの女の子でも適当に捕まえにいくところだったけど、今はそんなことする気も起きない。

「えぇ~城田さん最近つきあい悪いっすよ~。もしかして彼女でもできたんっすか?」

ニヤニヤと野木くんが僕の顔を覗く。

「だってこないだも練習終わったらすぐ帰っちゃったじゃないっすか。しかもマネージャーさんも『最近の城田はおかしい』って言ってましたし。」

「考えすぎだよ。」

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