続きは、社長室で。2
拓海が社長室に入室したあと、私たちは踵を返してエレベーターへと乗り込んだ。
箱型の密室空間に拓海がイナイと、無の骨頂でしかナイと思いつつ…。
一歩を踏み出せば届くのに…、隔てられたキョリと記憶に地団駄を踏んでしまう。
何となく感じる残香にすら、貴方を追い求めてしまうほど苦しいよ…。
「…スケジュールは確認済みだよね?」
「っ、はい…、その…」
グルグルと駆け巡る感情に翻弄されていると、同乗する桜井さんが口を開いて。
“何を意味するのか”を察した私は返答に困って、口を濁していれば。
「あとの詳しい事は、部長室で話すから良いよ?」
「え…、秘書課へ向かうハズでは…」
頭の回転の速い彼らしく、此処でも素早くフォローをされてしまった。
「ハハッ、違う違う!
不要な心配をさせない為だし、秘書課じゃ話せないしね?」
「・・・?」
コレが“出来の差”なのだろうか…、よく意味が解らずに首を捻ると。
「アイツの記憶は、未だ戻っていないようだけど…。
さっきのやり取りを見てて、細胞が反応し始めた気がするんだ」
「細胞…、ですか…?」
「一筋の光が見えてきた感じ、かな…?」
事訳が解らずにいる私に一笑して、桜井さんは停止した箱形を先に降りた。