続きは、社長室で。2
エレベーターのデジタル表示が、目的地への到着を音とともに示したトキ。
「もう誰もいないし、大丈夫だ…」
「・・・ッ」
やっぱり心情をお見通しなのか、私の手をキュッと握ってくれた。
定刻を過ぎたロビーは誰ひとりとしておらず、実に閑散としたモノで。
きっと残業をする社員は、各々の職場で仕事をしているのだろう。
それに何よりも、この手の温もりが安定剤になったの・・・
会社を出ると、跳ね上がるように開くドアにも慣れたのかサッと乗車出来て。
ランボルギーニは主君を待ち侘びたらしく、エンジンを轟かせて走行し始めた…。
そんな猛牛を容易く操る拓海の横顔を、顔を向けてジッと見つめる私。
貴方の傍で堂々と見ても許される、よね…?
すると赤信号で停車したあと、同じようにこちらに向き直ってくれた。
「このまま食事して行こうか。
言わば“2度目のデート”のお誘い…?」
「…憶えて…いたの?」
「当たり前だろ?
その格好で直帰させるなんて勿体ないよ」
クスッと笑って、頭をポンと撫で下ろしてくれた。