【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙④〜
「今宵は、月が隠れてしまわれたので」

と、お答えになるのを、二の君は、少しばかり不思議そうなお顔でお聞きになっていらっしゃいましたが、しばらくして、

「……雲居にも月の香りのかぐわしく……」

と、微かに呟かれるのを、一の君は、目を細めて、お答えになっていわく、

「……君を誘う浅き荷葉よ……」
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