今日から執事


会場を出た真斗が辿り着いた先は夜空が見えるテラスだった。

自然と足がここに向かったから、真斗は俺って実は女々しいのか、と一人呟いた。


テラスの端で夜空を仰ぎ見ると、強い光を放つものだったり、淡い光を放つものだったりと様々な星たちがある。

濃紺の空は曇一つ無く、澄んでいた。

何故だか、疲れる。


「大人気ないな…」


ぽつりと呟くと、それは夜風が攫っていった。

確かに大人気なかったと思う。

二人の楽しそうな、愛しそうな顔を見ただけで、こんなに思考が回らなくなるなんて。

それよりも、主を置いて勝手に会場から出て来た自分に情けなくなる。


このままここに居ても、手持ち無沙汰なだけだし、と自分のとった行動を反省し、そして居直った。


真斗はテラスから離れると、再び会場へと足を運んだ。





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