今日から執事
会場に戻り、再度受け付けで招待状を見せていると、先程の男と早稀が肩を並べて出て行くのを目にした。
途端にぶり返してくる苛立ち、虚無感。
真斗は二人の背中を目で追いながらも、特に何をするわけでもなく見送った。
「おい」
唐突に背後から声が聞こえた。
真斗はその声に聞き覚えを感じながら振り返る。
すると、後ろには片手にワインを持った早稀の兄である涼弥が立っていた。
真斗は驚倒して冷や汗が出たが、顔を取り繕って恭しく礼をする。
「涼弥様。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
婚約おめでとうございます」
こうして頭を垂れるのにも大分慣れたものだ。
初めては早稀に角度が違うだとか散々怒鳴り散らされたが今はそんな事はもう無い。
言うと涼弥は
「ああ、ありがとう。それより…」
と言葉を濁した。