今日から執事

暗闇の翻弄






微動だに動かない空気が屋敷の中を重苦しくさせる。

日本田園を思わせる古風な屋敷は、樫原の屋敷と似ても似つかない。


入り口の引き戸を閉めると、世界は闇しか無くなった。


やはり怖いのだろうか。
真斗の腕を掴む早綺の力が強くなった。
それに比例して早綺の体温がより伝わってくる。
温かくて、心が落ち着く。


真斗に寄り添うようにして歩いている早綺を見ると、若干だが横顔が強ばっているように見える。


けれど、不安を隠して真斗を心配してくれる辺りが真斗には嬉しいかった。

強がっているだけなのか、それでも真斗を心配し隣に居てくれているだけで充実だ。


最初の角を曲がった所に出てきたお化け一一といっても人間なのだが一一を難なくこなし足を速める。

隣で早綺が息を飲む音が聞こえたが、必死で恐怖を押し込めているようだった。


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