今日から執事


さらに足を進めると、ある部屋へと辿り着いた。

四方を黒い壁に囲まれた部屋の中は雨の日独特の生臭い匂いが立ちこめていて、湿った空気が肌を撫でた。


真斗は鈍器で殴られたような痛みを後頭部に感じで軽く呻いた。


嫌な感じがする。


本能的な何かを感じ取ったのか、真斗の頭は勝手に過去へタイムスリップして鮮明に記憶を映し出す。


忘れたくても忘れない、真斗の呪縛と言ってもいい映像が全身を巡る。


一一そういえば、あの日も雨でこんな湿った空気だった。




真斗は悪寒を感じ、頭を振って思考を中断した。

額を脂汗が這う。

すると、隣で真斗の腕を掴んでいるはずの早綺の体温が何故か遠のいていった。


「待て!っさ」


早綺、と言おうとして徐々に離れていく温度へと目を向けたら一瞬、視界が白く光った。


不意をつかれて瞼を閉ざした真斗は光が収まったのを確認すると、ゆっくりと瞼を開いた。


そして己がとらえた光景に息を呑む。





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