捨て猫
「うん、分かってるよ」
思わず微笑んでしまう。

「だから、暗い部分を見しちゃいけねぇんだって、ずっと我慢してたんだ」
「…」
「…でも、やっぱキツくてさ」
困ったように彼は笑う。

「人間、明るいのと暗いのと半分ずつでできてんじゃん?」
「うん」
「だからやっぱ、ずっと明るくいるなんて無理だし、ひとりになるとすげー考えちまうんだ」
「……」
「…ごめん、いきなりこんな話されても困るよな」

あたしが黙ったままでいるのが
困っているからだと思ったのか、
寂しそうに笑いながら彼は言った。

―――その瞬間、


「……えっ…」
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