Sin
「ありがとう。先生は僕の命の恩人だよ」

アレクセイはジャックの首に抱きつき、もう一度ありがとうと囁いた。

「僕、先生のおかげで今すごく幸せなんだ。本当にありがとう」

彼はぽろぽろと涙をこぼしながら笑顔を見せる。

「先生、僕ね、やっと夢が出来たんだよ」

「夢?」

うん、と頷きアレクセイはノートを手渡す。約束していた物語。

「将来、本を書く人になるんだ。だから今いっぱい勉強してるの」

ジャックは嬉しかった。

自分が夢を手放した事でアレクセイが夢を持てたのなら、それでいい。

彼の幸せな泣き顔に、辛かった日々が報われた気がした。

「先生の事みんなに話したら、みんな会いたいって。ね、僕の友達に会ってくれる?」

子ども達に囲まれているジャックを見て、施設長が近隣の養護施設の職を紹介してくれた。

傷ついた子ども達を支えるつもりが逆に支えられて。癒すはずが癒されて。今もその施設で働いている。


それでも、時折痛む傷痕。蘇る疑問。

――何故?

答えが見えない渦のような問いは、親の温もりを求める子ども達を目にする度にジャックの胸を苦しめ、笑顔に影を落とした。


< 105 / 331 >

この作品をシェア

pagetop