Sin
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「……ック。ジャック」

シンの声がして我に帰った。

「焦げてるぞ」

「あっ」

片面真っ黒のパンケーキ。

「あぁ、失敗した」

二枚目のケーキを焼きはじめたジャックの笑顔を見上げ、シンはぽつりと言った。

「……ジャックって時々、すごく辛そうに笑うよな」

「え?」

うろたえているジャックの腕に、シンは細い腕を回す。彼の小さな手は暑さのせいで少し汗ばんでいたが、不思議と嫌な感じはしなかった。

「たまにはさ。俺が話聞いてやるよ」

な? と、大人びた表情で尋ねる少年。ジャックは膝をつき、シンを強く抱きしめた。

「なっ、何だよ、話聞いてやるって言っただけだろ! 誰も抱きつけなんて言ってないぞ!」

「……うん」

離れようとせずにジャックはシンに囁く。

「話を聞いてくれなくて良いから、幸せになってほしい」

そう強く願う。どうか、どうか幸せに。

長い沈黙の後、シンは小声で答えた。

「俺、今、幸せだぞ? ジャックに会ってからは、さ」

じわり、涙が出そうになる。と、その時。

「……って、おいジャック、また焦げてるって!」

その日の夕飯は焦げたパンケーキ。苦い味と甘い温もりがジャックの胸に残った。


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