Sin
いっそ、憎めたら。そうしたら、こんな苦しい気持ちにならずに済むかもしれないのに。

「会いたいよ、母さん」

シンは目を閉じて、優しかった時の母親の姿を思い出してみた。

『シンはパパに似たのね』

『お留守番ありがとう。はい、ご褒美』

『大好きよ、シン』

『今日はお休みだから、シンの好きな焼き林檎作ってあげるね』

小さな部屋に漂う甘い香り。母さんの優しい微笑み。

どちらも大好きだった。いいや、今でも。

「……そうだ」

シンは零れていた涙を拭い、立ち上がった。林檎を四つ抱えてキッチンへ向かう。


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