Sin
コンロを使ったら怒られるかなと思ったけれど、ジャックを驚かせてみたくて。

シンは母親が教えてくれた通りに焼き林檎を作りはじめた。

スプーンを使って芯をくり抜く。

『上手ね、シン』

穴にお砂糖とバターを詰める。記憶を辿りながら、多分このくらいとシンは一人で頷いた。

一個ずつホイルでしっかり包み、フライパンに並べて蓋をする。

火を付けて、このくらいかな、と真剣な顔で調節して。

コンロの前に椅子を持って来て、シンは林檎が焼き上がるのを待った。

しばらくして部屋に漂い始めた美味しそうな香りは、記憶の中と同じで。椅子の上で膝を抱えたシンに甘い夢を見せてくれる。

もしかしたら、母さんは今頃俺の事探してくれてるかもしれない。

もしかしたら、今でも俺の事愛してくれてるかもしれない……。

「……母、さん」

理由など無く大好きで。心の奥で慕い求めている特別な存在。

抱きしめてほしい。

愛してほしい。

……会いたい。

「……やっぱり、ジャックの泣き虫が移ったかも」

ごしごしと目をこすりながら、シンは林檎の焼き加減を見るために蓋を開けた。


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