Sin
“生まなきゃよかった”。

あまりの衝撃に涙が止まった。錆び付いたナイフで容赦無く切り裂かれるような痛みが全身に走った。

息が出来ない。頭がぼんやりしてくる。

「……っ、ぐ……」

視界が暗くなっていく。涙でぼやけて見えるのは殺意の篭った母親の目。

母さん、お願い。せめてその手では俺を殺さないで。ねぇ、お願い。

シンの願いに反して、母親の指はどんどん喉に食い込んでいく。


ねぇ、母さん。どうして母さんは俺を嫌いになったの――


「どうしたんです?」

突然男の人の声がして、母親の手が首から離れた。

げほげほと咳込むシンの肌の色を見て、眉を寄せる男性が数人。

「この子に財布をすられて。返そうとしないんです」

母親が口にした台詞にシンは愕然とした。

スリ? 財布? ねぇ母さん、何を言ってるの?

「なるほど」

ぐるりと男の人達に囲まれ、シンは慌てて叫んだ。

「違う! 俺、スリじゃない!!」


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