Sin
「ジャ、……ク、行かな、で」

夢を見ているのか、目を覚ましたのか。ジャックはシンのそばに座って声をかけた。

「シン」

腫れた瞼がゆっくり瞬きする。そばにジャックの姿を認めてシンがほっとした表情を見せた、その時。

「シン、いるんだろ? 顔見せておくれよ!」

どんどんと扉を叩いて叫ぶ女の人の声。途端にシンは起き上がり、小さな悲鳴を上げた。

「いや、いや」

ひどく怯えた瞳。ジャックは扉を振り返る。

「迎えに来たんだよ! ねぇ出て来ておくれよ!」

“迎えに来た”? もしかして母親だろうか。しかしなぜ今?

扉へ向かおうとするジャックにシンはしがみついた。泣きながら何度も首を振る。

「やだ。やだ、やだ。ジャック行かないで。行かないで、お願い」

がたがたと震えているシン。

「母さんに、殺される。お願い行かないで。お願い」

殺される……? まさか、シンが商店街を飛び出した理由は。ひどい怪我の原因は。

「助け、て……」

呻くように呟いた言葉。ジャックは同じ言葉を口にした少年の事を思い出す。

『先生……助けて』

心の中にゆらり、炎が。

込み上げる怒りを抑え、ジャックはシンに言った。


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