Sin
「そういえば、シンの母さんは死んじまったのか?」

少し形がいびつな林檎を、おまけだと言ってシンに手渡しながら店主は聞いた。

「生きてるよ。こないだ会ったもん。元気そうだった」

シンはありがと、と嬉しそうに受けとり一口かじる。

「じゃあなんで、」

母親じゃなくて先生と。

そう言いかけて店主は口をつぐんだ。

母親が生きているのにシンが浮浪児だったという事は、答えは一つしか無い。

……『棄てられた』のだ。

「俺、黒いから、さ」

シンは林檎をじっと見つめながらぽつりと答える。

「俺と一緒に居たら、母さん幸せになれないんだって」

もう一口頬張る。美味しい、と小さく呟いてシンは微笑んだ。

「だから、もう会わないんだ。絶対に」

俯きがちに林檎をかじる横顔がひどく寂しそうで。

悪い事を聞いてしまった。店主はばつが悪そうに頭をぽりぽりと掻いた。


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