Sin
たん、と勢いよくコップがテーブルに置かれた。大きく吐かれた息が、深く頭を垂れたシンの髪を微かに揺らす。

「言い訳にしか聞こえないだろうが……母さんはそう言ってた」

「……」

しばらく沈黙が続いた。

泣いているのかと心配して何か言おうとしたジャックの耳に聞こえてくる笑い声。

「そっか……俺、父さんの身代わりだっただけなんだ」

ふふ、と笑いながらシンは顔を上げる。

彼は泣いていなかった。その表情は安堵しているようにさえ見える。

「なんだ、そっかぁ。俺、母さんに嫌われてた訳じゃないんだ」

よかった、と呟くシンに、以前にも感じたと同じ疑問が浮かんだ。

なぜ。なぜ、シンはそんなに簡単に母親を許せる?

あんなに酷く傷つけられ、母親のせいでむごく虐待されたのに。

なぜ……?

「バカだ、と思うだろ?」

シンにそう問われ、ジャックは我に帰った。


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