Sin
微かに、微かに震えているジャックの肩。彼は声を出さず、静かに泣く。

施設の誰かが言っていた。ジャックは傷付いた子を笑顔に出来る手品師だと。

でも、違うんだ。ジャックは器用な手品師なんかじゃない。俺達と同じように傷を抱えた“仲間”だったんだ。

「……シン」

掠れた声が耳に届く。

「……ありがとう」




自分が直接虐待された訳でもないのに傷つくなんておかしいと思っていた。

本当に辛いのは虐待されている本人なのだから、自分が辛いなんて口にしてはいけない気がしていた。

二人を助けてあげられなかった自分にそう言う資格は無いと思い込んでいた。

本当はずっと辛かった。

本当は沢山傷ついていた。

でもそれを認めてはいけない気がしていた。

体に糸が絡み付いた操り人形みたいに、ずっと自責の念に縛り付けられていた。

『愛せないのも辛いんだ』
『無理に笑うなよ』
『ジャックのせいじゃないんだ』

胸の中に染みていくシンの声。

その言葉は、心に絡み付き深く食い込んでいた糸を断ち切り、ゆっくりと解いてくれる。


多分、あの時。

ユーキを助けてあげられなかったあの時からずっと、僕は誰かにそう言って欲しかったんだ。




そろそろ寝ようか、と微笑むジャック。涙目だけど、あの辛そうな色は全く無くなっている。

俺、少しはジャックに恩返し出来たかな。

ほっとして、そしてなんだか嬉しくて。シンは幸せな気持ちで眠りに落ちた。


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