Sin
「おう、先生。部屋の準備出来てるぞ」
アパートの前で待っていた八百屋の店主は、大量の荷物を抱えて帰ってきたジャックに軽く手を振った。
「すみません、助かります」
「なに、どうせいつも暇な店だからな。一日閉めたくらいどうって事ないさ」
ジャックから荷物を半分受け取り、店主は彼の部屋に上がる。
「何時に迎えに行くんだ?」
「午後四時に約束してます」
「じゃあ三時半に車回してくるか」
お願いしますと頭を下げるジャックの肩をぽんぽんと叩き、店主は顔をしわくちゃにして笑った。
「おめでとう。よかったな、本当に」
心なしか震えている言葉にジャックは深く頷いた。心底嬉しそうな満面の笑み。
「そのかごにある林檎は俺からのお祝いだ。沢山食べさせてやってくれ」
流し台に置かれた籐のかごには、赤い林檎が転がり落ちそうなほど沢山入っていた。