Sin


「また来るね」

「元気でね」

円い月が窓から見えるようになった頃。

セイジ達は名残惜しそうに施設へ帰り、八百屋の店主は明日も来るなと言ってシンに何度もほお擦りして行った。

後片付けを始めたジャックは、眠そうに目をしばたたかせながら一生懸命タイプライターを打っているシンに声を掛けた。

「シン、疲れただろう? 今日はもう休んだ方がいい」

シンは反応せず、上手く曲がらない腕を動かしてキーを打ち続ける。

疲れていてもリハビリを欠かさない。そんなシンを見ていてジャックは辛くなった。

『これ以上の回復は見込めません』

本当に、これでよかったのだろうか。

あの時の選択は、自分達にではなくシンにとって最善の決定だったのだろうか。

静かな部屋に、タイプライターの音と食器を洗う水の音だけが響いている。ジャックは心の中で何度も同じ疑問を繰り返した。

シンは、これで幸せなのだろうか……。



「……っく」

しばらくして、洗い物を終え食器をしまっているジャックの耳にふと何かが聞こえてきた。


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