Sin
ジャックは料理を作りながら深く溜息をついた。

『母、さん』

涙で濡れた頬。眠っている間、シンは何度も母親を呼んだ。

ジャケットを肩にかけてやると安心したように息をつき、母親にありがとうと呟く。

その姿が。

親の温もりを求めるシンの姿が痛々しくて、やりきれなくて。

――何故?

ジャックの中に渦巻く、怒りに似た疑問。痛む古傷。

何故、悲しい思いを強いられる子どもがこんなにも多い?

子どもにとって親は特別な存在なのに。親にとっても子は宝物のように大切なはずなのに。

なのに、何故?

本来あるべき姿は“理想”になり、歪んでしまった悲しい“現実”が心を蝕む。

――何故?

答えの見えないその疑問はジャックの胸に重たい不快感を残したまま、かきまぜたコーヒーの黒い渦に吸い込まれていった。


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