Sin
夏が近づくにつれ日が長くなる。いつもより遅い時間なのにまだ外は明るかった。日中の暑さが幾分残っている生暖かい風。
夕焼けを背に、ジャックは俯きながら家路を歩く。
『どうして先生が教員免許をもらえなかったのかわかりません』
教師になるのが、夢だった。子ども達にかかわる仕事をしたかった。
ぎゅ、と手を握る。
『君に悪い意図がなかったのは分かる。しかし、教員として今回の件はあってはいけない事だろう? 責任を取るという意味でも、自主退学するように』
胸の奥に抱えた傷。ずきり、痛む。
『生徒の親に暴力を振るった教師』
『ありがとう先生。先生は命の恩人だ』
深い溜息をついて空を見上げる。
……手遅れになる前に手を伸ばしたかった。そして自分を抑えられなかった。
『先生の何が欠点なのですか』
教師になれなかった、ジャックの致命的な欠点。それは……。
『ジャック、ごめんね。そして、さよなら』
深い深い心の底に常に沈んでいる悲しい記憶は、ジャックの笑顔に影を落とした。