世界の説明書
 「それは駄目。だってパパってセンスないって、よくママが言ってたもの。パパのセンスがいいのはお嫁さん選びだけだって。」

「そんな事いってたのか。ひどいな、ママは。」 といって正人の目じりに熱いものが込み上げてきた。涙を流しても名子には分からないが、泣けば、声で分かってしまう。だから、正人はそこで会話を打ち切り、名子へ

「ほら、もうすぐ終業式始まっちゃうから、早く行くぞ。」

「はあい、でも約束だよ。絶対に水着買ってね。約束だよ。」

「わかった、わかった、から、じゃ行くぞ。」

元気な名子のお願い事に元気付けられ正人は、自分と名子を引き離そうとしている者の存在を忘れ去っていた。家の外に出ると小さな子供達が、全身で夏を満喫していた。青々と茂った新緑の香りが、明子と出会ったばかりの頃を思い出させた。

何故、おまえは死んだのだ。

何故、お前は殺されなければならなかったのか。
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