世界の説明書
 またしても、思考の裏側に閉じ込めた、決して答えの出ない疑問が頭を出した。世界が不幸を誰かの為に蓄えているとでもいいたげに。
名子が車に乗り込み、正人はアクセルをふかした。


何故、俺の娘が失明したのだ。

何故、俺の家族なんだ。

 正人の世界に対する疑心暗鬼が目を覚ましだした。名子に、パパは名子を見ていないと言われたあの日以来、完全に心の中にしまう事が出来たと思っていたあの感情。生きる希望や、元気を一瞬にして、暗く、恐ろしいものに変えてしまう感覚。晴れわたる世界が、ヘドロまみれの下水道に変わる思考。駄目だ、駄目だ、と正人は自分に言い聞かせ、来週名子が着るであろう水着をどこで買ったらよいか、必死に自分の思考をポジティブな方向に向けようとした。 そんな正人の心の葛藤すら名子には全てお見通しのようで、
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