世界の説明書
義務

 女子高生が血まみれで死んでいる、と通報を受けた長谷川は、股間を濡らしながら事件現場に急行した。最初に彼の目に飛び込んできたのは、少女の赤い下着だった。まただ、と最近自分の町でよく起こる女性の殺人事件に、彼は異様なほどに興奮していた。なんて、破廉恥なんだ、あんな真っ赤な下着を世間にさらしながら死ぬなんて。それにスカートも短すぎる。あの公衆トイレで親父とやっている女と一緒だ、、と考えてから、先程の少年に自分がそれを覗いているビデオを見せられた事を思い出した。あの少年は、彼の言い付けを守れば、絶対に誰にも口外しないと言っていた。そして、長谷川もそれを信じていた。しかし、よく考えてみたら、何故自分はあんな子供に命令されなければいけないのか、この警察であり、世界平和の使徒である自分が何故だ、と長谷川に我慢できない怒りが込み上げてきた。この制服を着ていれば無敵の自分の力を、たかがビデオ一本で自分から引き剥がそうとしている少年。許せない、断じて許せない。神の代わりに成敗しなくてはいけない、、と自らの新たな使命を発見した時、彼が何日か前に財布を落としたといって派出所に来たのを思いだした。確か、携帯電話の番号を聞いたはずだ。よし、探し出して罰を与えようと、被害者の女子高生の股座を覗き込みながら、長谷川は二郎の事を殺そうと決めた。自分にはその権利があると信じていた。なにせ、自分は法の番人の警察官様だからだ。
 派出所に戻り二郎の携帯電話に電話した。すると、一人の中年男性が電話にでたが、どうやら二郎ではない様だった。財布の落し物の件と伝えるも相手は「そんなものは知りませんが、何か、妻の事件の事ですか」と訳の分からない事を言われたので、そのまま無言で電話切った。あの少年が嘘まで自分に吐いた事がさらに彼の怒りを増大させた。あいつは生きていてはいけない人間だと確信した。そして、派出所の防犯カメラに映っていた二郎の顔を拡大コピーして、一人町へと狩に出かけた。
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