世界の説明書
警察から事情を聞いた名子は暗闇のどん底にいた。なぜ、あの時感じた不安をそのまま素直に母親に伝えなかったのか。自分の横にいた死んだ魚の臭いがする男性は誰なのか。 警察も目の見えない名子には何も聞かなかった。自ら交番に駆け込んできた二郎に対しても警察は疑いの目を向けては居なかった。明子の死因は顔面を何度も素手で強打された事による脳挫傷と、体内から検出された覚醒剤のオーバードースによるものだった。ホームレスの死因も薬のオーバードースとの事だった。事件は薬で頭が混乱したホームレスの婦女暴行殺人事件として幕を閉じた。名子は光を失い、正人は気が狂うほど悲しんだ。世界は人の想像より遥かに残酷な顔を持っていた。公園のドブで死んだ魚が腹を抱えて笑っていた。