世界の説明書
 「悪いがあなたを殺せない。あなたは死ねない。生きてこのまま、苦しみぬかなければならない。死は優しいものだ。この飴と同じで、あなたの感じる不安や絶望の全てをあなたから拭い去ってくれるもの。あなたはもっと苦しまなければいけない。苦しめ、苦しんで、もっと泣け、喚け、叫べ。お前の苦しみに終わりをもたらすのはお前の死だけだ。だが、俺はお前を殺さない、自殺もさせない。お前は自分で死ねる程強くは無い、お前を死なせてあげられるのは俺しかいない。」
 と何度も繰り返す。彼は死ねない事に自分の胸を痛め、生きている事の恐怖で、毎日、二郎が来るのを待ちわびる。飴玉で得る安心感は、彼の母親が彼に与える安心感を凌駕しだしたが、まだ、足りなかった。やはり、人間の本能はなかなか揺るがない。母親も大分元気になってきた。
 そして二郎は、最後の仕上げに取りかかった。
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