世界の説明書
 確かに一瞬でも気を抜けば、何かと衝突するだろう。この誰も、誰の事も見ていない世界でたくさんの意識が左車線の進行方向に濁流のように流れていた。早朝と深夜はだいぶ人が少なくなるが、昼間は歩けたものじゃないと彼は昼間町に出るのをあきらめた。それに、僕には町のやかましさがうらやましくもあり、誰も自分に気付かない優越感と同居する疎外感にいらついていた。すごい速さで走るカラフルな車が、町を我が物顔で走っているのを見て、自分の父親を殺した奴等が今も平然と自由に町を闊歩していることに、僕は腹が立った。町は殺戮現場で、戦場だった。
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