世界の説明書
人形


 正人の運転する車が、盲学校の門の前に止まった。その中から出てきた長い黒髪が世界に本当の黒とは何かを教えるように朝もやの中で舞っていた。。彼は、二郎に言われたとおりわざと、卑猥な笑みを浮かべながら、正人に近づいていった。心の壊れた彼の演技力など何の役にも立たないのに。明後日の方向を向いている彼の視線がようやく正人の視線と交わったとき、彼はおもむろに、これまた二郎の指示通りに言葉を発した。

「あなたは、、、あんたは、、、、お前は、、お前はその横にいる娘になんと説明したのかい。お前の妻が俺達の性欲処理のティッシュペーパになった事を。」

彼はそれだけ言うのにも必死で、しっかりと動かない脳をフル回転させて、二郎に教えられた文章を述べた。しかし、それがあまりにも棒読みだった為に、正人は一瞬彼が何を言っているのか解らなかった。朝っぱらからいきなり現れて、なんの前触れもなく自分の妻の死について尋ねてくる視点の会わない男に対し、正人は彼の言葉を聞くよりも、まず物理的な危機感を感じていた。さっと名子を自分の車に戻し、正人平静を装って口を開いた。

「あ、あなたは、一体誰なんですか?それに、な、何を言っているのです。あなたは今自分が何を言っているのか解っているのですか?」
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