世界の説明書
 彼は正人の質問の意味が解らず、ただ先ほどと同じ言葉を繰り返す。

「お前の妻は俺達の性欲処理だった。俺達は、俺達は、、」そこまで言うと彼は憔悴しきったかの様に呆然と立ち尽くしていた。
二郎は腐った肉の臭いがする彼の母親のテントの中からその様子を覗き込んでいた。 彼もまた、呆然と立ち尽くす男の横で話を聞いていた。

「な、何を言っているんだ。あんたはあの事件を知っているのか。何故だ、何故知っている。そうか、あの死んだ犯人の仲間か。そうだろう。お前達で俺の妻を狙っていたんだろう。そのテントの中から、いつ襲うか計画をねっていたのか。答えろ。」

 正人は怒りを露にし、目の前の疲れ果てた男を問い質した。
事件?事件とはなんなのだ。彼は自分の全く知らない事で自分が責められている事にどう答えてよいのか解らず

俺は、俺は、自分の夢を叶える為に、ここにきただけだ。あんたが何を言っているのか全く解らんが、俺は、俺は、これで失礼する。」

そういうと男は直ぐにその場を立ち去ろうとした。
正人は、彼の答えの意味が全く解らなかったが、それと同時に目の前に男をじっくり観察した。彼の言葉は彼の口から発せられているが、彼の心の言葉ではない事を次第に理解しだした。そして、何故この男はこんな事を自分に告げるのか、彼の夢とは何だと、怒りよりも様々な疑問がいくつも浮かび上がった。
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